2007.2.26.  バンディング問題 


はじめに

捕獲を伴う野鳥の調査には色々あります。

山階鳥類研究所のHPより引用

中型〜大型の鳥には発信器を取りつけてその行動を逐一追跡することができます。この方法ならば1羽に発信器を取りつけただけで上図のように詳細なデータを得ることができるので、渡りの経路調査などに大きな成果を上げています。また、羽が生え替わるときに発信器は羽と一緒に脱落するように取りつけられるなど一定期間で外れる工夫がされ、調査対象の鳥に必要以上の負担がかからないように配慮されています。 

 

かすみ網にかかった小鳥

一方、「スズメ目」に分類されるいわゆる小鳥(だいたいスズメサイズ以下)には、その小ささゆえに発信器を取りつけることができません。そこで、小鳥をかすみ網などで捕獲してアルミ製の足環を取りつける調査が行われています。この調査方法を「バンディング(鳥類標識調査)」と呼びます。足環の情報を読みとるためにはもう一度その鳥を捕獲する必要がありますが、一度捕獲された鳥がもう一度捕獲される確率は大変低いので、他の方法に比べてデータがなかなか得られません。また、着けられた足環は一生外れることはなく、足環の負担は一生続きます。

バンディングは、環境省が山階鳥類研究所に委託して税金を使って国家の事業として四十数年間続き、毎年20万羽に足環が着けられています。実際に調査活動をしているのは山階鳥類研究所(以降、山階鳥研と略します)が資格を与えた「バンダー」と呼ばれるボランティア調査員です。

今、このバンディングに対して多くの疑問の声が上がっています。疑問点は大きく次の2つに分けられます。第1の疑問は、

●調査を逸脱して法令違反や問題行為・悪質行為を繰り返す一部のバンダーが野放しにされているのではないか?

というものです。これは、下図の右側の「山階鳥研の行う標識調査」全てに対するものです。第2の疑問は、

●「スズメ目」のいわゆる小鳥について、成果に対して犠牲が大きすぎるのではないか?

というものです。これは、下図の右側の色をつけた部分に対するものです。

さらに最近では、

●バンディングを監督する機関--- 山階鳥研 標識研究室と環境省 自然環境局野生生物課 ---の杜撰(ずさん)さ

が明らかになり、

●環境省による鳥インフルエンザの調査でも問題行為が繰り返されていること

がわかってきました。 

 

バンディング問題が表面化して1年半が経ちました。このコンテンツでは、最新情報を織り込んで、初めての方にも分かるようにバンディング問題を次の6つの構成で総括するものです。

1.これまでのバンディングの成果と犠牲そして問題点

2.悪質なバンダーの存在と山階鳥研と環境省の関係

3.監督機関としての対応---山階鳥研標識研究室

4.調査の統轄機関としての環境省自然環境局野生生物課

5.おわりに--環境省と山階鳥研に対して

6.(参考)バンディングを取り巻く世界

 


1.これまでのバンディングの成果と犠牲そして問題点

バンディングの目的とは?

バンディング(鳥類標識調査)の目的とは何でしょうか。山階鳥研 尾崎標識研究室長は次のように述べています。

本業務は鳥類標識調査を実施することにより、鳥類の渡りの状況、生態等を解明し、もって鳥類の保護施策及び国際協力の推進に資することを目的とする。

つまり、渡り鳥の移動ルートなどを調べて鳥の保護などに役立てようというものなのです。

 

成果と犠牲のバランスは?---1つのデータの陰で死んでいる3羽

では、避けられない犠牲についてはどうでしょうか。「スズメ目」のいわゆる小鳥について検証します。かすみ網にかかった野鳥には強い負担がかかります。実際にショック死するもの、網からはずす際にケガをするものがあります。これまで事故のデータは公表されていませんでしたが、2005年11月に初めて山階鳥研より「1,000羽に4羽が調査時に死亡した」ことが公表されました。これはたいへん小さい数字のようですが、そうではありません。

スズメ目で得られたバンディングの35年分のデータがまとめられている『渡り鳥アトラス』(山階鳥研発刊)には、再捕獲率が出ています。再捕獲率とは、捕獲されて足環を着けられた鳥がもう一度捕獲される率です。再捕獲されて初めて移動の情報が得られるわけですから、調査の目的を達成するためには再捕獲されることが必要です。

スズメ目における再捕獲率は0.28%です。死亡0.4%に対してデータとなるケースは0.28%ということになりますが、再捕獲されるということは同じ鳥が2回捕獲され捕獲時の事故の危険に2回さらされるということです。ですから、0.28:0.4×2 ≒ 1:2.8 となり、

1つの渡りのデータを得るのに、調査現場で約3羽を事故死させている

ということになるのです。これでは、バンディングが野鳥を減らす原因になっていると言えるのではないでしょうか。もし、事故死した鳥が絶滅危惧種であったなら、バンディングが絶滅を加速していることになってしまいます。(事故死率がもっと高い報告もあります)

 

さらに、死亡0.4%は調査現場で事故死したものであり、放鳥後に衰弱して死亡したものは含まれません。ある調査現場を見学した方は、このような感想を寄せてくださいました。

5年ほど前に一度バンディングを見た時はかすみ網でもがいている鳥にショックを受けましたが、信頼している人の調査でもあり深く考えませんでした。しかし最近ある動物園の行事としてのバンディングを見学して、考えが変わりました。

小さめの小鳥でしたが、羽を広げて長さを測ったり重さを量ったりバンドを付けたりの様々な作業のあと、係りの人が手を開いて放そうとしたのに、目をつぶりぐったりとしたまま飛ばないのです。指で何回かつついて、やっと目を開き飛んでいきましたが、一瞬死んでしまったかと思いました。失神するほどのショックだったのでしょうか。それとも疲れ果ててしまったのか、またはその両方かもしれません。

この写真は別の調査地でバンダーによって撮影されたものです。飛べないほど弱っている様子がよくわかります。このように、調査によって弱ってしまう小鳥が多くの見学者によって目撃されています。そういうバンダーによる調査では、実際には1つの渡りデータを得るのに3羽を事故死させるどころか、その数倍から数十倍の犠牲を強いているとも想像されます。それどころか、そもそも死亡数の正しい集計はできるのか?という疑問まであるのです。

また、一度に100羽以上の鳥がかかり、50羽以上が死んだ例があるそうです。こういう事故は度々目撃されているにもかかわらず(他にも、かすみ網に一度に大量にかかった鳥が野良猫に襲われて手が着けられない状態になったとか)、調査の安全性を示すべき側からは一切語られることはありません。このような大量死の事故があることは単純に死亡率だけでバンディングの安全性を語れないことを示していると言えるでしょう。

 

以上のことは、成果と犠牲のバランスとして納得いかないだけでなく、調査手法として安全性に重大な欠陥があるとも言えるのではないでしょうか。「鳥類の保護施策及び国際協力の推進に資する」と言いながら、まさしく本末転倒と言えるのではないでしょうか。

 

おかしな理論

では、少なくとも3羽を犠牲にして得た1つのデータとはどのようなものでしょうか。得られるデータとは、「放鳥時の場所と日時」「再捕獲時の場所と日時」です。たったこれだけです。

バンディングのデータ集『渡り鳥アトラス』では、この2点を直線で結んで考察を加えていますが、これに意味はあるのでしょうか。調査目的の「渡りのルートを解明する」ためには、一体何本の直線が必要なのでしょうか。つまり、一体どれほどの鳥を殺してしまうのでしょうか。

  

 コルリ(オス)

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例えばこのコルリのデータは35年間かかって得られた全てです。たったこれだけなのです。さらに、仮にこの直線がたくさん引けたとしても「渡りのルート解明」に役立つかは分からないという意見もあります。そもそも一直線に飛んでいくはずがないのです(詳しくは「地図を読み解く ―オオジュリン編―」を)

 

地道にデータを蓄積するタイプの研究は、新しい技術を開発するような研究と違って、ある日何かのきっかけでブレークスルー(行き詰まりの打開)があって目的を達成できる性質のものではありません。蓄積できるデータの数はかける時間に比例しますから、数十年かけて必要なデータが集まらないのであれば、その2倍,3倍の時間をかけても状況が変わらないことは容易に想像できるのです。

つまり、

これまで数十年続けて十分なデータが得られていない種では、バンディングで渡りのルートを解明することは不可能である

という結論が導き出せるのではないでしょうか。足環を着けた種の半分以上が、これまで一度も再捕獲されていないのです。

 

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一方、ツバメでは上図のようにたくさんの直線が引けています。ツバメには集団でねぐらをとる性質があります。この性質を利用して、ねぐらで待ちかまえて一網打尽で捕獲できるわけです。『渡り鳥アトラス』p.34には、295の回収があったことが書いてあります。これに犠牲率1:3を当てはめてみると、この図の陰で約900羽のツバメが事故死していると見積もられますが、東南アジアにはバンディングの技術移管が進められている「途上」であるそうです。そうならば事故率はもっと高いことが考えられるのではないでしょうか。

実際にそれを裏付けるデータを教えていただきました

鳥類標識調査報告書91-99年から、ツバメのリカバリー数のV、再放鳥と放鳥できず( )、の数をピックアップしました。合計68件あります。その内、国内回収が40件。再放鳥34件に対して再放鳥できないもの6件で、15%が再放鳥できなかったことになります。外国回収は28件で再放鳥7件、再放鳥できないもの21件。再放鳥できないものは75%にのぼります。ほとんど事故死しているのではないでしょうか。

ねぐらで待ちかまえて一網打尽にする方法は能率がいいように思えますが、一度に大量の鳥がかかるので大きな事故のリスクも高まるのかも知れません。これは外国だけでなく国内の調査にもあてはまるのではないでしょうか。

 

さらに重要なことがあります。東南アジアはバンディングの技術移管途上なのですから、まだバンディングが行われていない国や地域がたくさんあるのです。上図は、日本で放鳥されたツバメたちのほとんどが、あたかもフィリピンで越冬しているかのように見えますがそうではありません。直線の引かれていない国や地域では、まだ本格的なバンディングが始まっていないのです。そもそもジャングルに覆われた熱帯地方をくまなくカバーすることなど不可能でしょう。つまり、

この状況でツバメのバンディングを続けても、もうこれ以上の成果は期待できない

と言えるのではないでしょうか。


 ねぐらを飛び交うツバメ

そして、それでも続けられている「一網打尽」が、ツバメたちの貴重なねぐらを奪っているとしたら、これも「本末転倒」と言えるのではないでしょうか。調査翌日から数万羽のツバメたちは姿を見せなくなったという報告もあります。

 

寿命が分かる? 杜撰な調査?

「バンディングでは野鳥の寿命が分かる」ことが謳われています。たまたま再捕獲された時の年齢が、どうして寿命と言えるのでしょうか。「寿命」についての詳しい検証はこちらです。「スズメ目の寿命は5年以下か」と「寿命って何だろう

また、バンディングの過去のデータを集めて精査してみると、集計の杜撰(ずさん)さが浮き彫りになってきます。データの数字があわないのはなぜでしょうか。

 

四十数年やっての結論?

我が国で現在のバンディングが始まって四十数年が経ちました。我が国は島国であり四方を海に囲まれています。これはバンディング先進国の欧米とは異なる特殊な環境です。陸続きに移動していく欧米の渡り鳥と違って、我が国を行き来する渡り鳥は海上を飛んできます。海上では調査はできません。

つまり、欧米と同じ方法で渡りのルートを解明するのは根本的に不可能なのではないでしょうか。欧米と比較して大変低い回収率がそれを裏付けており、それゆえ成果も大変乏しいのです。「野鳥保護や環境保護に生かされたことも集めたデータが学術論文になったこともないのです」という鳥類標識調査の検討委員のコメントがこれを象徴しています。

休む場所のない海上を数百キロメートル飛んできてヘトヘトになってたどり着く離島には調査のためのかすみ網が待っています。学術調査だとしてもこれは許されることでしょうか。「鳥類の保護」とは正反対なことをしているのではないでしょうか。

 

山階鳥研の対応

バンディング問題に関わって、私は色々な人と話す機会を得ました。その会話の中に山階鳥研のことも頻繁に出てきました。私が驚いたのは、話した人全員が山階鳥研に対して不信感を持っていたことです。異口同音に「役に立つと思って珍しい亜種の写真を送ったけど無視された」「まともに対応してくれなかった」とおっしゃいます。山階鳥研標識研究室は成果を得るべく真摯に研究に取り組んでいるのでしょうか。

 

その思いを強くしたのが、ある標識鳥が死体で発見された時の山階鳥研の対応を聞いた時です。発見者が山階鳥研に連絡すると「脚を折って取り外して足環だけ送ってくれればいい」とだけ。「死因を知りたいので原因を究明して知らせて欲しい」と個体そのものを送って頼んでも無視され、返事は一切無かったとのことです。その鳥に外傷は全く無く、くまなく触っても骨折も確認されない一方で、異常に胸肉がなくて痩せていました。交通事故死体とは明らかに異なります。かすみ網にかかって足環を着けられたことによる衰弱死も十分考えられるのです。

一方で山階鳥研が「残念ながら死亡した個体については、できる限りその死を無駄にしないため、原則的に標本として山階鳥類研究所に送るよう指導しています。」と言っています。鳥類標識調査の是非以前に、山階鳥研の対応は不誠実と言わざるを得ないと思います。


 山階鳥研標識研究員の手紙(山階鳥研に質問した方へ宛てた返事)

 

繰り返される問題行為

バンダーになるには資格が必要です。資格を持つバンダーは、当然『鳥類標識マニュアル』にも精通していなければなりません。ところがどうでしょう。これは2006年6月に、北海道のバンダーのブログにあった画像です。ヤブサメのつがい(たいへん小さいですが、どちらも成鳥です)を捕獲して指で挟んでの撮影です。雌には抱卵斑があると書いてあります。育雛期のヤブサメの巣の近くでかすみ網を張ったということです。

『鳥類標識マニュアル』には、

繁殖期においては、1羽の犠牲が1巣の卵やヒナに影響を及ぼすので、特に注意しなければならない。たとえば巣の近くに網を張ると、親鳥が頻繁に捕獲されて繁殖を妨害する結果になる。また巣を破壊したり、巣の掩蔽を取去ったりして営巣に重大影響を与えるごとき行為は絶対につつしまなければならない。

とあります。抱卵斑が有るということは、今まさに卵を抱いているか孵ったばかりの雛を育てているということです。その状況で、オス親とメス親を同時に拘束して写真など撮っている余裕はあるのでしょうか。卵がまだ全部孵っていないなら、卵は冷えて死んでしまいます。孵ったばかりの雛がいるなら親鳥の保温が必要です。産毛も生えていない雛だったら衰弱して死んでしまいます。持ち方も問題です。片手で2羽を拘束してもう片方の手で撮影しています。親鳥に事故があったら巣で待っている雛たちは全滅してしまいます。

このように、マニュアルを無視して好き勝手な方法で調査を行っているバンダーがいるのです。このブログには、携帯電話のカメラで撮影した画像までもが公開されていました。学術的な識別のための写真を残すのに携帯電話のカメラで大丈夫なのでしょうか。「バンディングしないと写真がなくなる」というのはどういう意味なのでしょう。写真を撮るのが目的なのでしょうか。

次に述べる京都の事例が大問題となった後も、このようにバンダーによる問題行為が至る所で繰り返されています。

これらの画像は「問題あるのではないか」という指摘を受けてすぐに削除されました。しかし、問題ある画像やwebページを消されても、問題あるバンダーがいなくなったわけではありません。

京都の事例を始め、山階鳥研は問題バンダーを処分もせず再発防止策も作りません。それどころか問題を隠そうとしています。この隠蔽体質こそが、必要以上にバンディングに対する不信を生み出していると思います。

 

2.悪質なバンダーの存在と山階鳥研と環境省の関係

次に、悪質なバンダーの存在についてまとめます。 

あふれる問題行為

2005年夏にバンディングについて調べ始めた時、インターネット上にはバンダーの法令違反(鳥獣保護法違反)や調査マニュアル違反が溢れていました。これらは明らかに調査を逸脱しており、「調査の名を借りた野鳥の虐待」でした。この事例だけではありません。次々にバンダーによる問題行為が全国で見つかりました。

このような問題行為を放置できるはずはありません。資料をまとめて監督官庁である環境省やバンディング委託先の山階鳥類研究所など関係機関に知らせました。2005年9月のことです。

環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室の担当官は、

●環境省としては、この様なことが起こらないように山階鳥類研究所を指導していく。
●(異例のことであるが)10月初旬に山階鳥類研究所を通して、全バンダーに対して「通達」を出す。

などのコメントを出して、バンダーを監督する山階鳥類研究所に連絡してくれました。では、山階鳥研標識研究室はどんな対応をしたでしょうか。バンダーへの定期連絡の中で注意を喚起しただけなのです。さらに通達の内容は「個人情報を含むので公表できない」とのこと。問題のバンダーは今でも変わらず活動しているようです。

 

実は、山階鳥研のこのような対応は予想されたものでした。2004年に撮影されたこの写真には問題バンダーと山階鳥研標識研究室長が写っています。つまり、バンディング問題が表面化するずっと前から問題バンダーとは鍋を囲む旧知の仲だったのです。

2004年冬、京都の養鶏場で鳥インフルエンザが猛威をふるって鶏数十万羽が処分されたことを記憶している方も多いと思います。この時、環境省と山階鳥研による鳥インフルエンザ調査が行われていました。その調査の様子を紹介した新聞記事によると、環境省のバンディング担当部署の課長補佐も問題バンダーとは旧知の仲だ書かれています。この環境省課長補佐はバンダーでもあります。同じページには山階鳥研標識研究員も一緒に写っています。

山階鳥研標識研究室の方々も環境省担当官も問題行為を繰り返していたバンダーと旧知の仲だったということは、このバンダーが法令違反やマニュアル違反を繰り返していたことを皆が知っていたということなのではないでしょうか。

 

鳥インフルエンザ


 鳥インフルエンザを発症した鶏の様子 動物衛生研究所webサイトより引用
 

 

さらに、この鳥インフルエンザ調査の新聞記事から、もっと驚くことが見つかりました。赤いアンダーラインを入れた部分です。

「ニュース映像を見た人たちや地元住民に不安を募らせない為、支給されたマスクや手袋をせずに調査に臨んだ」と書かれています。感染症の調査にのぞむ場合、二次感染や感染拡大を防ぐためにマスクや手袋を使うのは当然であり、住民に不安を募らせない為に使わないのは本末転倒です。

この写真でも確かにマスクも手袋もしていません。下の写真ではようやく着けています。(マスコミが入ったので慌てて着けたのでしょうか)

日本では人間が感染するタイプの鳥インフルエンザはまだ確認されていないそうですが、万一このバンダーが感染したら取り返しのつかないことになるでしょう。また、人間は感染しないといっても鳥から鳥には感染します。ですから本来は、使い捨ての手袋を1羽ごとに交換して調査に望むべきだと考えられます。ところが、この調査では手袋もせず手の消毒もせず、ウイルスをつけた手で次々に105羽もの鳥を触ったと書いてあります。そして、鳥インフルエンザに感染したカラスを見つけたとも書いてあります。最後には、カラスを手に持っての記念撮影です。遊び半分ともとられかねないこの調査が、鳥から鳥への感染拡大を助長していたのではないでしょうか。

この件について、厚生労働省の鳥インフルエンザ担当(健康局結核感染症課)にも資料を送付して確認をとりました。2006年8月6日のことです。その後電話で厚生労働省担当官に確認しましたが、いまだに「環境省に過去に遡って杜撰な調査の事実関係を確認しているが回答はまだ無い」とのことです。 

 

この杜撰きわまりない調査にはバンダーは手伝いとして参加しただけであり、調査を主導したのは環境省と山階鳥研なのです。

2006年5月の山階鳥研標識研究室の研究員の手紙(山階鳥研に質問した方へ宛てた返事)にも全く同様の認識が書かれています。つまり鳥インフルエンザに対する甘い認識は山階鳥研の共通認識だということです。

「鳥インフルエンザによる死者は100人程度であり、もっと恐ろしい感染症はたくさんある」とは、言葉がありません。例えばインドネシアでは、69人が発症して52人が死亡しています。死亡率を計算すると75%という、とんでもなく高い数値となるのです。そして、ウイルスが、人から人へ感染するタイプに変異するかも知れないので世界中が警戒しているのです。もしそうなれば世界中で数億人の犠牲がでるという試算もあり、インドネシアでは現実に人から人への感染が起こっています。「感染」と「発症」の違いも分からない人間が感染症を語るのは無理があると思います。

あのものものしい白い防護服は、このような事態に備えてリスクを最小限にするために着用しているのです。養鶏場の方々や関係者の皆さんが大変な思いをしているそのすぐ近くで、マスクも手袋もせずに素手でカラスと記念撮影をするのが「調査」なのでしょうか。

 


 世界が警戒する鳥インフルエンザの新聞記事(中日新聞2月19日夕刊より引用)

 


 鳥インフルエンザウイルスの電子顕微鏡写真

 

問題行為の起点はどこなのか? 

ここでひとつの疑問がわきます。環境省と山階鳥研のこのような「調査」は、京都の鳥インフルエンザ調査だけで見られたものでしょうか。いまでも手袋もマスクも着けない調査が山階鳥研によって続けられています。

山階鳥類研究所のHPより引用

 

このような状況を見てくると、調査の模範たるべき環境省と山階鳥研が普段のバンディング調査でも杜撰な行為や問題行為を繰り返しているのではないかと思えてきてしまうのです。

 

3.監督機関としての対応---山階鳥研 標識研究室

山階鳥研の対応

バンディングの監督機関の山階鳥研 標識室長は次のようにコメントしたそうです。

ごく一部のバンダーの問題ある行為を大きく取り上げて、バンダー全員が悪者のような印象を与えた事で、多くのバンダーが非常に迷惑しています。

バンダーを監督する立場からすれば、ごく一部でも問題があれば放ってはおけないはずです。問題ある行為を指摘された時点で処分も含めて再発防止策を公表するのが当然です。もし民間会社がこのようなことを言えば信用を失ってしまい、世論の非難を免れることはできないでしょう。

悪質なバンダーを山階鳥研に告発しても、その回答には「注意点を示しました」「配慮を指示しました」「今後とも周知徹底いたします」という抽象的な文言が並ぶのみで、具体的な対応はなにも書かれていません(2005年11月の回答書)。 

このような山階鳥研の不誠実な対応によって、疑問の声はさらに大きくなり、「バンディングに疑問を持っている」という意思表示の黄色いステッカーやマークがあちこちで見られるようになりました。それにより、山階鳥研はようやく「調査の停止やバンダー認定書の取り消しなどを盛り込んで再発防止に取り組む」という公式コメントを出しました。2006年2月のことです。

ところが、このようなコメントが出されただけで、その後具体的な動きは一切ありません。それどころか、このようなコメントを出す一方で、山階鳥研はいまだに「悪質な中傷だ」「いいがかりをつけられて困っている」と言っているようなのです。


 山階鳥研標識研究員の手紙(山階鳥研に質問した方へ宛てた返事)2006年5月

事実でないことが掲載されているのなら、なぜ、指摘して修正を要求しないのでしょうか。どこに「全てに反対するよう誘導する内容」が掲載されているのでしょうか。

 

他にもあります。書籍『北海道 島の野鳥』(北海道新聞社刊)には、北海道の西の海上にある離島,焼尻島でのバンディングの様子が多くの写真とともに紹介されています。記事を書いたのは焼尻島で調査をしているバンダーです。

  

「その日は、昨日から入ってきた寒気団で、島はもう真っ白な世界。時折、横殴りの吹雪が襲いかかる閉口するような朝でも、網場に出向くと・・・中略・・・吹雪の合間に、次々にかかる彼らを宿の主人まで手伝わせ網から回収作業に追われていたら」 (「彼ら」とはスズメ大の渡り鳥ベニヒワのこと)などと焼尻島でのバンディングの様子が書かれています。

悪天候時に調査をすること、バンダー以外が網から鳥を外すことは、調査マニュアルに「禁止する」ことが書かれており、環境省の鳥獣保護業務室でもマニュアル違反であると認めています。吹雪の中で網にかかった野鳥はあっという間に衰弱してしまいます。

この写真には「魚の干しカゴ」に鳥が入れられている様子が写っています

これは問題行為だらけの調査であり、書籍という形で明確な証拠になっています。ところが、この事実を指摘しても、山階鳥研の標識研究室長は、

「文章的には危険を感じるような書き方がされていても、実際には、危険はないと思っています。」

と答えるだけなのです。なぜ危険でないと考えるか説明していただけないことには納得できません。これでは、バンディングの統轄機関として説明責任を果たしていないばかりか、バンダーの監督義務を放棄したことになってしまいます。 

山階鳥研や一部のバンダーは、「可哀想などという感情論で批判するな」「学術調査であり研究だ」「素人が口をはさむな」と異口同音に言います。しかし、標識調査は税金を使った国家の事業なのです。ですから素人であっても国民には疑問を投げかける権利があって標識調査に携わる人間には説明責任があると思います。感情的に批判しているわけではなく、客観的な証拠や数値をもとに説明を求めているのです。野鳥の棲める環境は年々減り続けて野鳥も減っています。調査に際して安全性は最優先されるべきことのはずです。

 

調べてみると、バンダー資格認定証の発行は1990 年からです。このことに関して興味深いことを教えていただきました。皆さんもご存じの通り、山階鳥研は故山階芳麿博士が私財を投じて創設されたものです。山階博士は、鳥類の分類学に新境地を開くなど我が国の鳥類学を国際レベルに引き上げ、中西悟堂氏(日本野鳥の会創設者)らとともに鳥類保護運動に献身して日本鳥類保護連盟会長や国際鳥類保護会議副議長,環境庁自然環境保護委員などの要職についた偉大な方です。文字通り生涯を野鳥に捧げた山階博士は1989年に88才で亡くなりました。

その直後の1990年、全調査従事者にバンダー認定証の保有が義務付けられるなど鳥類標識調査の制度が大きく変わったのです。 

1989年までの『鳥類標識調査報告書』は手書きの報告書でしたが内容はとても立派なものです。ところが、制度が変わってから報告書の厚さは年々減り、その内容も「まるで学生がゼミ前夜に慌てて書き上げたレジュメのようなもの」に成り下がっていると思います。

 

山階博士の現役時代のような成果があがらないのは、現在の制度の課題や問題点を改善しようとしない結果だと言えるでしょう。調査の統括責任者である山階鳥研の標識研究員が、せっかく集まったデータの集計を後回しにして調査地に赴いて何週間も研究所を留守にしています。これで研究成果を取りまとめることができるのでしょうか。犠牲を払って得た何年分ものデータを放置したまま同じことを漫然と繰り返して、果たしてどのような成果が上がるのでしょう。

これは、山階博士を始めとする偉大な先人の名誉を傷つけるだけでなく、データを集めたバンダーや調査で犠牲となった野鳥たちをないがしろにした行為と言えるのではないでしょうか。

「生物というばらつきが大きく扱いにくい存在を材料にする生物学の世界では、 たった1つのデータが大きな意味を持つことがある」と、ある方からご指摘を受けました。その通りだと思います。だから、「データの数が少ない」という批判は全てに当てはまるものではないとも思います。が、現在の山階鳥研 標識調査室は、たった1つのデータさえも生かそうとしていないように思えるのです。成果があがらないのは、現在の研究員の姿勢そのものに問題があるのかもしれません。

 

4.調査の統轄機関としての環境省自然環境局野生生物課

環境省の対応


  バンディングに関係する組織の関係
 

2006年2月に、山階鳥類研究所から「調査の停止やバンダー認定書の取り消しなどを盛り込んで再発防止に取り組む」という公式コメントが出されました。これを受けて、私はその前向きな回答書の内容を実践していただきたく、環境省自然環境局 野生生物課長と鳥獣保護業務室長に資料をつけて8項目の提案書を送付しました。3月12日のことです。

3月29日に開かれる鳥類標識検討会で議題にのせてもらうためです。鳥類標識検討会とは、バンディングの現状や将来について専門家の意見を聞く会議体です。山階鳥研と環境省担当官も参加しています。バンディングが「野鳥保護や環境保護に生かされたことも集めたデータが学術論文になったこともない」とコメントして下さった大学教授も鳥類標識検討会のメンバーです。

ところが、あとで分かったことですが、送付した資料や提案書は鳥類標識検討会に諮られることはありませんでした。2通とも「環境省内で紛失した」ということでした。宅配便を使って別便で送り、配達されたことまでは確認されています。厚さ2センチもあるA4書類封筒が2通とも同時に無くなるとは一体どういうことでしょう。

これを知らされて謝罪を受けたのは、5月30日に上京して霞ヶ関の環境省本庁で自然環境局野生生物課の担当官と面談した時です。この瞬間にいくつかのことが全部つながりました。鳥類標識検討会の日程を確認するため環境省に何度電話しても「担当が席を外している」の一点張りで、何度も折り返しの電話を頼んだにもかかわらず返事がなかったこと、メールを出しても何日たっても読まれることすらなかったこと(開封確認要求をセットしたメールなので読んだ時点でこちらが分かります)、などなど。

書類束の入った大きな封筒が同時に2つ消失するとか、パソコンを入れ替えるとメールサーバーの中のメールが消えるとか、省内には「問題提起を隠蔽しようとする力」が働いているということでしょうか。

 

5年前の平成14年のパブリックコメントには既に「標識調査にかかる事項を削除するべき(特定の団体のみが行っており、その結果も公表されず、調査の効果が明らかではない。かすみ網の使用が許され、殺傷と虐待が行われている)。」という指摘があるのを見つけました。pdfファイル

つまり、●山階鳥類研究所のみに丸投げされていて、●結果も成果も公表されていないので調査の意義さえ疑わしく、 ●その陰で野鳥の殺傷と虐待が行われている、 という指摘です。

これに対し、環境省は、「山階鳥類研究所のみに丸投げされていて、結果も成果も公表されていないので調査の意義さえ疑わしく」という部分は無視しています。そして、環境省が「適切に取り扱われているものと認識して」いたにもかかわらず、実際に野鳥に対する殺傷と虐待が行われていたことが明らかとなり、今でもその状況はなんら改善されていないのです。

  

バンディングは、環境省が山階鳥研に委託して税金を使って行っている国家の事業です。ですから、最終的な責任は環境省にあります。以前から、これほど多くの法令違反や問題行為や不正行為が告発されているにもかかわらず、そして、「山階鳥研を指導する」と言いながら、環境省は疑問の声を無視して山階鳥研に対してなにひとつ指導は行いません。これはなぜでしょうか。 

 


  絶滅が心配される北海道のシマアオジ 

生かされない北海道のシマアオジのデータ

バンディングの委託先である山階鳥類研究所標識研究室長はシマアオジを例に挙げて

数を減らしている鳥類について渡りの状況等実態を明らかにすることは、保護施策や国際協力を推進するための基礎的な資料として、非常に重要なことと考えられます。例えば、シマアオジは、年間放鳥数でみると1985年頃までは全国合計が30〜40羽ほどでしたが、それ以降は1992年の24羽が最多であり、近年は一桁の年がほとんどで、かなり顕著な減少傾向にあることが明らかになっています。

と、調査の意義を述べておられます。ところが、標識調査担当の環境省野生生物課計画係では、このシマアオジのデータを全く把握しておらず、「保護については野生生物課保護増殖係が担当なのでそちらに聞いてくれ」とのこと。結局、調査データは環境省のどの部署も把握していないのです。まるで責任をたらい回しにしているように思われます。これでは、標識調査のデータを保護施策に生かすことができません。 

 

調査がしたいだけ?沖縄のノグチゲラ

沖縄のキツツキの仲間のノグチゲラ1977年に国の特別天然記念物に指定されましたが生息地である森林の乱伐は止まらず、絶滅の危機に瀕しています。ノグチゲラの保護活動は、地元の方々により1984年から本格的にはじまりました。この方々は、それまでの長年に渡る観察によって生息分布など多岐にわたる資料を作り上げていました。ところが、これらを無視して、地元のバンディング調査反対の声(バンディングは危険であるし基礎データは十分あるので、基礎調査であるバンディングは不要であるという意見)を押し切る形で1999年3月からバンディングが行われました。

そして、まさに調査開始直前の1992年末に、「鳥類への足環装着の安全性」(pdfデータ)という論文が学術誌に掲載されました(1992年10月20日受理)。

ウンチや体重増加と足環の重さを比べ、軽いので問題ないと結論づけています。缶ジュースを飲んで富士山に登るのと缶ジュースを片方の靴にぶら下げて登るのとが同じといえるのでしょうか。

さらにこのような記述も見つけられます。

このようにしてノグチゲラのバンディングが始まって13年が経過しましたが、バンディングで得られたデータは環境省にも山階鳥類研究所にもありません。バンディングの許可を出したのは環境省なのです。一体なんのためにバンディングを始めたのでしょうか。「保護施策や国際協力を推進するため」というのは調査のお題目に過ぎないのでしょうか。(ノグチゲラのバンディングについて詳しくはこちらをご覧下さい

 

5.おわりに---環境省と山階鳥類研究所に対して

 

この1年半で、いわゆる小鳥のバンディングについて

●調査を逸脱して法令違反や問題行為・悪質行為を繰り返す一部のバンダーが野放しにされているのではないか?
●「スズメ目」のいわゆる小鳥について、成果に対して犠牲が大きすぎるのではないか?

という疑問に加えて

●せっかくのデータを生かそうとしていないこと
●監督機関に所属するバンダーまでもが問題行為を続けていること
●問題あるバンダーの存在を認めたにもかかわらず、監督機関は形だけの対応で、具体的な改善策を何も考えないこと

が分かってきました。

 

山階鳥研環境省自然環境局野生生物課が適切に対応しないのであれば、「研究者気取りの鳥オタクが道楽でバンディングをやっていて、面倒なことは無視して責任の所在を曖昧にして問題の隠蔽をはかろうとしている」と誤解されかねないと思います。

そこで私は、昨年(2006年)11月に環境省自然環境局野生生物課長に質問書を送付しました。山階鳥類研究所 山岸所長にも資料を添えて書簡を送りました。責任の所在を明確化して問題行為があったことと具体的な再発防止策を公表することが必要だと考えるからです。

  

ところが、この質問書に対して環境省からは何の回答もありません。問題の存在を認めたにも関わらず、各論になると責任転嫁が始まるのです。

山階鳥研は、バンダーによる問題行為や再発防止策には一切触れず、かわりに取って付けたように「鳥類標識調査 仕事の実際と近年の成果」をホームページに追加しました(2007年2月4日の更新)

「調査の停止やバンダー認定書の取り消しなど、かなりきつい条項を盛り込んで、再発の防止に取り組む所存です」と、2006年2月の回答書や研究所長から頂いた手紙に書いてありましたが、それが単なるポーズだったことを大変残念に思います。

また、成果としてはホームページに書かれたことが全てだということなのでしょう。成果と主張されている項目中には、「スズメ目の小鳥」についてはツバメのことがあるだけです。ツバメについては既に書いたように、もうこれ以上成果は期待できないと思います。

 

多くの問題点や検討すべき課題を放置したまま、バンディングを続ける意義を私は見つけられません。税金を有効に使っていると言えるのでしょうか。

また、鳥インフルエンザの危険性が叫ばれる中、環境教育と称して小学校やイベントにバンディングを取り入れて子どもたちや一般の人たちに野鳥を触らせることは非常に危険だと思います。

そもそも、鳥インフルエンザのリスクを犯してまで直接野鳥を触るバンディングを続ける必要があるのでしょうか。人間や鳥の安全を第一に考えるならば、全調査を一旦中断すべきではないでしょうか。

 

WHO(世界保健機関)のデータを抜粋

厚生労働省検疫所のポスター

1.鳥に注意!東南アジア、欧州、アフリカ地域で鳥インフルエンザ(インフルエンザH5N1)が発生拡大し、鳥からヒトへの感染事例が多く報告されています。一般に鳥との濃厚接触で感染しますので、生きた鳥が売られている市場や養鶏場へはむやみに訪れない、死んだ鳥等に触れない、手洗いやうがいの励行に心がけましょう。  とあります。

 

お読みいただいた皆様へ

バンディングに疑問のある方は、直接質問してみましょう。監督機関には「説明責任」があります。封書の場合は、返信用封筒に宛先を書いて切手も貼って同封しておきましょう。電話の場合は、前もって疑問点をまとめておき、簡潔な質問を用意しておいて、それに答えていただく形がよいでしょう。一方的にクレームを言っても意味はありません。ファックスやメールでも同様です。

環境省

山階鳥類研究所

 〒100-8975東京都千代田区霞が関1−2−2

環境省自然環境局野生生物課 鳥類標識調査担当 様

Tel: 03-5521-8344  Fax: 03-3504-2175

電子メール:  shizen_yasei@env.go.jp

 〒270-1145 千葉県我孫子市高野山115

 財団法人 山階鳥類研究所

 標識研究室 鳥類標識調査担当 様

 直通Tel: 04-7182-1107 Fax: 04-7182-4342

 電子メール: bird@yamashina.or.jp

「メールが消えた」などというトラブルを避けたい方は、下の「環境省へのメール送信」をクリックしてメールを送信して下さい。環境省(shizen_yasei@env.go.jp)と私(HQH05760@nifty.ne.jp)の2つのアドレスに同時に送信されるように設定してあります。もし、いつまでも返答が無ければお知らせ下さい。私が上京した時に確認してきます。

環境省へのメール送信

 

また、皆さんのバンディングに対するご意見を集計するために、ネット投票のページを作りました。バンディングが「現状のままで問題無い」と思うのか「現状を改善する必要がある」と思うのか、投票してみて下さい。集計結果は逐一ご覧になれます。(同じパソコンからは1回しか投票できません)

ネット投票のページはこちらです。
 

 

6.(参考)バンディングを取り巻く世界

これほど成果が無く問題点だらけのバンディングが、なんら変わることなく四十数年間続けられてきたことを不思議に思われる方も多いと思います。バンディングに疑問を表明する人は、昔から居たのです。

たとえば、

「バンディングは野鳥のようなデリケートな生き物を扱うのであるから,もう少ししっかりした教育制度・資格審査があった方がよい.活動がボランティアみたいなものというのもなんとなく胡散臭い.もちろん,しかるべき技術・知識・モラルを兼ね備えた人も多いのであろうが,個体数がそれほど多くない鳥を相手にする以上,医療現場なみの失敗は許されない的厳しさを必要とするべきではないか.野鳥の生態を調査することは大変重要だが,そのせいで個体数を減らしてしまっては本末転倒も甚だしい.」

という意見があります。また、こういう意見もあります。

一方で、調査に参加したことがある人に話を聞くと、非常に多くの人が、「あんなの調査じゃない!」という。調査の常連さんたちの調査中の態度はしばしば真剣味に欠け、実に雑に野鳥を扱い、調査のために必要最低限鳥に触れるのとは程遠く、笑いながら野鳥を扱いまわすようなケースや、野鳥をおもちゃのように扱うことも、決して稀ではないようだ。他にもさまざまな話が伝わってくるが、一言でいえば、心を込めて調査をしている人の数に対して、不謹慎な輩の割合が非常に高いのである。「こんなの絶対におかしい!」と日頃温厚な人が憤り、二度と調査には参加しないという人が僕の身の回りにも数人おられる。

野鳥に脚輪をつけるためには許可を受ける必要があるが、許可を与える側は、許可だけを与えておいて、得られたデータを熱心に生かそうとは考えていないようにように感じる。ただ鳥を捕まえ脚輪をつけるのは、研究ではなくて採集ではないだろうか?採集が推奨されているようでいて、僕には、研究や科学がおかしいのではなくて、そこがおかしいように感じられる。

 

問題点のすり替え

が、こういう疑問の声に対して、「かわいそうという感情だけで反対している」「足環は見栄えが悪いのでカメラマンが反対する」「鳥を触れるのが羨ましいだけ」と、問題点のすり替えがなされるのです。これは昔から繰り返されてきたことなのです。

 

メディアを使った正当化?

例えば、我が国唯一の野鳥専門の月刊誌には「標識リングは重いのか?」というバンダーによる記事が掲載されました。


  BIRDER 4月号, p.59, 文一総合出版(2006)

掲載月から逆算すると、バンディングに対する疑問の声が大きくなった時期に書かれたものと考えられます。この記事を要約すると次のとおりです。

ツバメに装着するリングの重さは約0.05g。対してツバメの体重は10g。リングの重量は体重の0.5%で、これを体重60kgの人間に当てはめてみると300gの重さの物体を体につけられたことになる。平均的な重さの携帯電話3個分くらいである。

軽くない負担に見えるが、それは「大きさ効果」を考えていないからである。例えばアリは自分の体重の何倍もの餌を持ち上げることができるが、ゾウにはできない。この理由は「大きさ効果」で説明できる。体長が2倍になると、面積はその二乗の4倍になるが体積は三乗の8倍になる。筋力は筋肉の断面積に比例するので力は4倍になる一方、体重は体積に比例するので8倍となって、力が4倍になっても体重が8倍なので、差し引きで力は逆に半分になるわけだ。この「大きさ効果」で人間とツバメを比べると、ツバメは人間より18.2倍力持ちと言える。これを元に考えると、ツバメに着ける足環は、人間に16.5gの重さ(十円玉4個分)の物体を装着されたこととほぼ同じである。

何とも無茶な理屈です。「大きさ効果」を使って人間とツバメで体重と筋肉の断面積の関係を比較するなら、人間とツバメは同じ骨格を持ち同じ筋肉のつき方をしているという仮定が必要になります。哺乳類である人類と鳥類であるツバメに、この仮定が成り立つでしょうか。骨格も筋肉のつき方もまるで違います。そもそも地上を歩く人間と空を飛ぶツバメとでは「重さ」の意味が異なるのです。同じ重さのおもりを「水平に移動する」のと「重力に逆らって空中に持ち上げる」のとでは必要なエネルギーは比べ物になりません。

こんな初歩的な物理の問題を追求しても仕方ありませんが詳しい検証はこちら)、この記事は大変重要な示唆を与えているのではないでしょうか。こんな詭弁を使ってまで、鳥類標識調査(バンディング)は安全だと印象づけたいという「力」が働くということです。雑誌なのですから、当然、編集部内で記事の内容を精査しているはずです。その過程で出たであろう編集部内での疑問の声を潰してまで記事を掲載させた「力」とは何なのでしょうか。 

「自然保護」や「野鳥保護」も使い方によっては都合の良い言葉になります。バンダーの一部が保護活動に寄与したと言っていても、バンディングそのものが保護や保全に役立った事例はないのです。「調査だ」「研究だ」「保護だ」と言われると、それ以上は追求しずらい雰囲気が作られます。それを利用してバンディングに対する疑問の声を煙に巻くのでしょうか。また、バンディングに対して疑問の声を上げると脅迫や嫌がらせを受けます。  

疑問点だらけのバンディングが何も変わらず続いてきたのは、このようにして疑問の声を潰してきたからかも知れません。そしてこのことはバンダーの世界にも当てはまるのではないでしょうか。問題あるバンダーを告発したり問題提起しようとする良心的なバンダーを黙らせてしまう「力」が働くのではないかということです。

 

野鳥を取り巻く「鳥屋」---バカだとか無知だとか素人だとか

私には、前々から疑問に思っていたことがありました。野鳥の世界には、識別に異様に拘ったり珍しい野鳥を見ることに血道をあげる人々がいます。このこと自体は個人の嗜好の問題ですから他人がとやかく言うことではありません。が、こういう人々の中には、識別に詳しくない人のことを「素人」とか「無知」などとバカにするのです。こういう識別至上主義の人々が、識別に詳しいバンダーを必要以上に持ち上げて、一部のバンダーを慢心させて問題行動を助長してしまうのではないでしょうか。 

もう1つ疑問に思っていたことがありました。バンダーはいつも調査をしていますから、どこにどんな鳥が出ているかを大変よく知っています。そして、野鳥の世界には珍しい野鳥を見ることに血道をあげる人々がいます。「珍しい鳥を見るために遠征したけれど同行した友人のせいで目的の鳥を見られなかったので絶交する」とか、「ライフリスト(見たことのある鳥)が数百を超えない人間はバードウオッチングに来るな」という人々がいるのです。

このような「珍しい鳥命」の人々にとって、どこにどんな鳥が出ているかを大変よく知っているバンダーはどんな存在なのでしょうか。野鳥を取り巻く世界には、「野鳥の識別」と「野鳥の情報」を異様に有り難がる人々がいて、それが一部のバンダーを何重にも取り巻いているのではないでしょうか。そういう取り巻きが、バンダーの暴走を止めるどころか助長しているのではないでしょうか。そういう一部の「鳥屋」と呼ばれる人々にとって、バンディングに対する疑問の声は邪魔な存在なのではないでしょうか。

バードウオッチングは「生き物好き紳士淑女の大人の趣味」というイメージとはやや異なる一面を持っていることをおわかり頂けたでしょうか。もっともかけ離れた一面が、バンディングを取り巻く世界なのかも知れません。バードウオッチングの世界では、バンディングに対する疑問を語ることはタブーでもあるのです。

 

 

黄色いステッカーはこちらで手に入ります。あなたの自転車や車にも貼って「バンディングに疑問を持っている」と意思表示して下さい。

黄色いマークはこちらにあります。ホームページやブログをお持ちならば、マークをつけて意思表示して下さい。

どうかよろしくお願いします。

 


[参考]

2005年11月の時点での中間総括はこちらです。教育現場を巻き込んだバンダーの問題行為などをまとめてあります。調査の様子の動画もあります。

・2005年11月の山階鳥研からの回答書

・2006年2月の山階鳥研からの回答書

・参考資料 『鳥類標識マニュアル』 (pdfです。19.6MBあります。)

・参考資料 『渡り鳥アトラス』(pdfです。4.2MBあります。)  

 

以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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