2005.8.25.その2   嵐の前の静けさで(色んな意味で)晴れ   カワセミ王国 ポイント:D0087point)


【研究って?】

 自然科学に限らず、「研究」には目的があります。そして、その目的を達成するために何をすればいいのか考えます。いわゆる方法論というものです。で、その方法を実行してみます。そして得た結果をもとに目的を達成します。ところが世の中そんなに簡単じゃないので---とくに自然相手だと---得られた結果では目的を達成できないことの方が多いのです。そこで何をするかと言うと、使った方法でホントによいのか?その方法を何度も繰り返すか?改良するテはないか?別の方法はないか?等と考えるわけですね。そして、新しい方法なり改良した方法なりで、目的を達成します。随分と抽象的な書き方をしましたが、これがいわゆるPDCAサイクルというヤツです。

plan(計画) →→ do(実行) →→ check(評価) →→ act(改善

というサイクルのことを言います。「そんなこと、オレ(ワタシ)でも知ってるわい!」とモニターに向かって呟いたアナタ、アナタは偉いっ。尊敬してしまいます。

 では、研究者にとってこれが常識か?いえいえ、どうもそうじゃないようですね。例えば野鳥の標識調査(バンディング)。特に小鳥や希少種を対象とした標識調査の成果は、かかっている時間に比してほとんど無いといってよいのではないでしょうか?----もしあるのでしたら在処を是非教えて下さい。あ、机の中に眠ったデータは成果とは言えないんですよ。きちんとパブリッシュ(公表)して、科学的な結論なり新しい知見なりを世に知らしめて初めて成果と呼べるものでしょう?

 何羽に足環を付けたとか、1羽の○○○を再捕獲してA地点からB地点への移動を確認した、なんてのは成果でしょうか。成果とは目的を達したことを言うのです。ですから、例えばある鳥種の保護が目的である標識調査ならば、その保護が具体的に進んで初めて成果があったと言えるものでしょう。「そんなこと言ったって相手は野生の生き物だし時間がかかるんだよ。」はいはい、その通りですね。でも30年かかってできないことがあと10年や20年でできるのでしょうか?だって方法論はまったく変わってないんでしょ?PDCAサイクルのcheck(評価)にあたる部分をいままでしてこなかったってコトでしょ?act(改善)も考えなかったんでしょ?え?標識するのはボランティアだから報告すればよいのですか、そうですか。方法論だって、頼まれた方法でやらなきゃ困るんですもんね。

 そうなんです。野鳥の標識調査(バンディング)の問題点の1つはこの点にあると思うのです。標識調査は環境省が主宰します。それを山階鳥類研究所に依託しています。さらにそれを標識調査員に依託しているのです。標識調査員の方はボランティアだそうです。

 このように、plan(計画)するところと、do(実行)する方が離れていてしまっているのです。この三者に緊密な連携があればよいのでしょうが、どうもそうではないようです。その結果、check(評価)やact(改善)はドコがするのかが不明確になり、方法論の進歩は止まるし、データの有効活用はできていないし、一部の標識調査員の暴走を許してしまうことになってしまったのではないでしょうか。

 誤解の無いように申し添えますが、環境省も山階鳥類研究所も標識調査員の方々も、いい加減にやってるなんて決して思っておりません。少ない予算の中で、少ない人員の中で、限られた時間の中でよくやっておられると思うのです。最初から野鳥をいじめようなんて人もいないでしょう。しかし結果として、満足できる成果がないどころか野鳥をいじめてしまっている。この現実を踏まえて、方法論を議論すべき時にきているのではないでしょうか。標識調査のシステムそのものも見直す時期にきているのではないでしょうか。

 最後にもうひとつ。標識調査は研究のみならずアセスメントなどにも関わっています。巨大公共事業につきもののアセスメント、しっかり行われているのでしょうか。ワタシ、恐ろしい結果を招きそうなものを見つけました。次回に書いてみたいと思います。

 

「シロウトが偉そうなこと言ってんじゃねーよ!」と思われましたか?たいへん失礼しました。でも、ワタクシ、大学でも民間でも少なからず研究経験がありますし、自然科学系の学位も二つ持っておりますし、publishしたpaperの数も学会発表数もアナタよりずっと多かったりするかも知れませんよ(-.-;)。   >カワセミ虐待おじさんへ(はあと

 


 

さてさて、これは、一部の標識調査員の暴走の典型例だと思われます。75ページにわたりますが、時間が無い方は、特に問題だと思われる6ページをぜひ。そして、お読みになった率直な感想をぜひ掲示板へお願い致します。

http://www.rakutai.co.jp/etc/nakagawa/doc/051.html 2羽のカワセミの嘴をつまんでぶら下げています。翼も引っ張ってます。引っ張ってるのは(バンダー資格はないと思われる)先生のようです。小学校の先生や生徒(バンダー資格はないと思われる)にカワセミを持たせています。捕獲されたのは川の畔のはずですから、小学校まで連れてくる時間・子供たちを集めてカワセミをもたせて写真を撮るのにかかる時間などいったいどれだけの時間、カワセミ達は拘束されていたのでしょう。また、小学校の校庭で放鳥しています。カワセミの行動範囲はそれほど広くありません。捕獲地点から遠く離れた場所で放鳥するのはかなり問題だと思います。

http://www.rakutai.co.jp/etc/nakagawa/doc/052.html オシドリ雄雌を捕獲して小学校に連れて行って「押し掛け出張授業」。捕獲したカワガラスの翼を引っ張って小学生と一緒に「ハイ、チーズ」。アオサギの首根っこをつかんで無理矢理翼を広げさせて「ハイ、チーズ」etc. とくに、オシドリ雄雌を捕獲して2つの小学校に連れて行っての「押し掛け出張授業」がひっかかります。2つの小学校を地図上で確認すると、直線距離でも10kmは離れています。捕獲場所から最初の小学校までの移動時間・授業、そしてまた移動・授業、捕獲場所へのリターン時間など、一体どれほどの時間、オシドリたちは拘束されていたのでしょう?また、捕獲した野鳥を車に積んで長距離(往復を考えると決して短い距離とは思えません)移動することは許されるのでしょうか?

http://www.rakutai.co.jp/etc/nakagawa/doc/057.html 捕獲したオシドリとヤマセミを町役場に連れて行き職員とともに「ハイ、チーズ」。こういうのは「標識調査員の特権」だそうな。これも、捕獲場所から町役場まで移動しているわけです。しかも記念撮影(?)は役場内のようです。捕獲場所からの短くない距離の移動、短くない時間の拘束、さらに野鳥を「屋内」に連れていくのは大変なストレスを与えることになるのでは?

http://www.rakutai.co.jp/etc/nakagawa/doc/061.html 捕獲したケリの翼を引っ張って小学生と一緒に「ハイ、チーズ」。自分でも「記念写真パチリ!」と書いていますね。「大サービスのミニ愛鳥教育を実践しました。」とも。こいう行為を教育というのでしょうか?

http://www.rakutai.co.jp/etc/nakagawa/doc/069.html 愛弟子(?)が、捕獲したヤマセミとカワセミを小学校に連れて行って「押し掛け出張授業」。やはり長時間の拘束が気になります。

http://www.rakutai.co.jp/etc/nakagawa/doc/070.html 捕獲した翡翠に「標識足環をプレゼント」して、校長先生(バンダー資格はないと思われる)に放鳥させている。また、「メボソムシクイが捕獲できた。環境省の標識足環を装着し、生態研究に欠かせない調査方法であり、野鳥の保護の為にも大切な調査であることを説明し、再びどこかで発見されることを祈って放鳥した」とありますが、まさか学校でそのまま放鳥したのでしょうか?捕獲場所で放鳥しなくちゃいけないんじゃ。。。「こうした実際の鳥の温もりを感じ、形態をつぶさに観察できる鳥類標識調査を」とありますが、鳥類標識調査の趣旨から完全に外れているんじゃ。。。それに、まさか、これだけの子供たち全員に「温もりを感じ」させてるわけじゃ。。。

 

---野鳥の翼を引っ張って記念撮影することが教育なんでしょうか?野鳥に過度のストレスを与えることは教育のために仕方ないことなんでしょうか?自分が野鳥になったことを想像して考えてみてください。いきなりかすみ網で捕獲されたらどう感じるでしょうか?パニックに陥って暴れるのは当然でしょう。そこへ巨大な生き物がやってきて(人間のことです)つかまって連れていかれ、押さえつけられて重たいモノを脚に無理矢理取り付けられる。暴れようとしても身動きひとつできません。殺される恐怖だって感じるでしょう。さらに、次々におそろしい巨大な生き物が触ってきます(人間のことです)。このまま殺されて喰われてしまうかも知れないという恐怖を延々と味わうのです。これを教育と呼べるのでしょうか?

---加減の分からない子供たちに、しかもたくさんの子供たちに、小さな野鳥を触らせるのは大変危険なことじゃないのでしょうか?小さな鳥はたいへん弱い存在です。加減の分からない大勢の子供たちに触らせた時、脚や翼を痛める可能性が高いと思いませんか?その場は元気に飛んでいったって(元気に飛んでいったんじゃなくて必死に飛んで逃げていったのでしょう?)、その後大丈夫だという証拠はどこにあるのでしょう?自然の中で生きるということは常に捕食者に狙われるということです。翼をいためていつものスピードで飛べなければどうなうるでしょう?脚を痛めていつものように歩けないとどうやって餌を拾うのでしょう?

---紹介したページは、明らかに鳥類標識調査からは逸脱していると思われます。では、「環境教育」も兼ねているなら全て許されるのでしょうか?

---これらのページをご覧になって、多くの方は嫌悪や憤りを感じられたことと思います。「調査」とか「教育」を議論する前に、多くの方が嫌悪や憤りを感じる行為そのものが、最も大きな問題点なのかも知れません。そして、私が最も危惧することは、子供たちが「生き物はこういう風に扱ってもいいんだ」と誤った認識を持つことです。教育とは、命を慈しむことをまず第一義とすべきではないでしょうか。それをないがしろにして調査の重要性を説いたところで、子供たちは何を吸収するのでしょう。カワセミを捕獲して触らせなくとも、けなげなプロポーズの様子を、懸命に雛に魚を運ぶボロボロの姿を、小さな体でヘビに立ち向かう姿を、遠くから見せるだけで教育の第一義を達することができるのではないでしょうか。自然の厳しさ、命のつながりを肌で感じてもらえるのではないでしょうか。そして、大人達は、命のつながりの場を守っている姿を見せるべきじゃないでしょうか。豊かな自然を自慢することは、その土地の人の心も豊かであることを自慢することじゃないんでしょうか。紹介したページが新聞社の公式サイトにあり、画像には小学校や町役場の人たちも写っています。掲載されているあのような画像を見て文章を読んで、誰も疑問を持たなかったのでしょうか。私は驚きをかくせません。と同時に、恐ろしいことだと思います。

 

 

抗議メールを送ってはいけません!ご注意!

まずは、現状を多くの人に知らせることだと思います。野鳥に興味のない人や野鳥を知らない人にも見てもらいましょう。家族や友人や彼女や彼氏にも、見てもらいましょう。webサイトを運営されている方は、ご自分のサイトで紹介してください。野鳥系のサイトでなくても、全然違う分野のサイトだって構いません。

義憤にかられて抗議メールを送ったところで前進はないと思います。

まずは、多くの人に知らせること、コレ、重要なのです。

・「じゃあ何もしないの?」………そんなはずありません。逃げ場はありませんよ。

知り合いの教育関係巨大サイトで「環境教育を考えるキャンペーン」の準備中です。


  

--ご意見表明してくださったり、バンディング問題を紹介してくださったサイト--

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前々からバンディングについて思うところがあったのですが。

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