2005.8.21.  曇りときどき雨   カワセミ王国 ポイント:D0087point)


【「渡る」ということ】

 

 夏鳥の中にサシバという中型のタカがいる。秋田県以南で繁殖し、冬は、沖縄や台湾、さらには遠く東南アジアにも渡って越冬する。

 このサシバは、毎年十月の初め、申し合わせたように、愛知県は渥美半島の先端、伊良湖岬に集結する。まるで日本じゅうのサシバが全国大会でも開催したかのようなにぎわいである。

 十月の五日から十日前後、晴天の午前、これらのサシバは折からわき起こった上昇気流に乗って、ぐるぐると旋回飛翔をしながら、しだいしだいに、空高くまい上がっていく。十分上がりきったとみるや、今度は、西の方、伊勢湾の湾口をへだてて志摩半島の方へ向かい、高空から滑り下りるように滑空を始める。

 これは、はばたかなくても前進できるのだから、きわめてエネルギーのロスが少ない、上手な飛び方である。高度が下がってくると、そこには、好都合にも神島や答志島が海上に横たわっていて、その上に強力な上昇気流が発生している。これをとらえたサシバはまたもやぐるぐる回りをしながら、中天高くまい上がっていく。紀伊半島に至れば、陸地続きであるから、晴天でさえあればいたるところで上昇気流が利用できる。

 こうして紀の国を渡りきる時、紀淡海峡に面した加太湾に到達する。ここから海上を渡る時は、地ノ島や沖ノ島がある。やがて淡路島を越えて、鳴門海峡を渡り、四国を横断し、西端の長い長い佐田岬半島を西へたどると、豊予海峡である。ここにもぐあいよく高島と牛島がある。

 九州を南下して大隅半島の先端、佐多岬からは、大変である。薩南諸島から琉球諸島へと点々と島々が連なるが、その島と島との間の距離は、本州の小さな海峡の比ではない。なにしろ薩南諸島と琉球諸島を合わせた南西諸島全体では、本州の端から端までの距離に匹敵する長さなのである。

 今までのように上昇気流にばかりたよるわけにはいかない。いささか無精を決めこんできたサシバも、ここでは懸命にはばたいて、大海原をひたすら飛び続けなければならない。だから、沖縄本島にも、宮古島にも、石垣島にも、へとへとに疲れてたどり着くのである。精根つきて大海原に果てたサシバも、数多いであろう。

[教育出版「中学国語1」より] 

 小鳥の渡りとは少し違いますが、サシバの渡りについて書かれたテキストを紹介しました。この前の教科書改訂で、残念ながら削除されたものです。

 鳥はなぜ渡るのでしょうか?詳しいことは分かっていません。だから「調査」「研究」するのでしょうね。が、彼らの本能に基づく行動を、いい加減な方法で邪魔するのはいかがなものでしょう。もちろん真摯な姿勢で「調査」「研究」に取り組んでおられる方が大部分なのでしょうが、だからこそ、野鳥を触ってはしゃいでいるような人間をなんとかしなくちゃいけないと思うのです。

 

 

 

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前々からバンディングについて思うところがあったのですが。

和田剛一カメラマンのwebサイト http://www.asahi-net.or.jp/~yi2y-wd/  ---ちょっとお疲れのようですが、頑張って下さいね。

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